昨日の記事で管理物件の合鍵(あいかぎ)保管について「別の機会に書かせてもらう」と、書きました。


忘れる前に書かせて頂きます


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賃貸物件の合鍵を管理会社が保管する話ですが、自分の記憶では10年以上前に、大手の賃貸管理会社が「合鍵の保管をやめました」と発表した事があり、その後も何社かの管理系会社が「保管しない」発表をしたと思います。

(合鍵を保管しない理由)
・貸室内の事は原則賃借人の自己責任だから(分譲物件と同じ)
・貸出し希望の対応が面倒(休日夜間に貸して欲しいと頼まれる)
・合鍵を保管するスペース等物理的な問題
・従業員による侵入等の不正リスク

と、言った事が保管しない理由なのでしょう。

特に、従業員が合鍵を使って住居侵入して事件を起こした場合は、その従業員だけの問題では無く企業としての責任となる訳で、不正防止方法を考えた場合は結果的に保管しないと言う選択に行き着く訳です。

自分的には、その考えは正しいと思います。

IMG_5593ただ、もし徹底するのであれば、鍵の引渡しの際に新品の鍵シリンダーを賃借人の目の前で交換して、その場で鍵の袋を開封せずに渡して「合鍵を作る隙が無い」状態を作るべきです。

鍵交換のスキルと引渡しの際に現地に行く時間が無いと実現できませんが、「鍵渡し屋」と言うジャンルでビジネスになるかも知れませんね。


で、もうひとつの「合鍵を保管する管理会社」側にも理由があります。

(合鍵を保管する理由)
・昔から保管していたから
・大家さんが持ちたがらないから
・緊急時に必要だから

まぁ 他にもあるかも知れませんが、自分の勤務先では上記の理由で30年以上にも渡り管理物件の鍵を保管している訳です。

この中で、一番重要なのは「緊急時に必要だから」の部分なのですが、実務的に言うと「安否確認」に関連する事です。

安否確認に関しては、過去の記事でたくさん意見を書いてきましたので、そちらを参考にして頂きたいのですが、この安否確認、「緊急性があった」のか「早とちり」だったのかは結果論なのです。

他人の部屋に入居者の許可なく入室することは、分譲物件でも賃貸物件でも、住居侵入の刑法犯として扱われる犯罪行為です。

ですが、「室内で倒れているかも知れない」と、言われた場合に「本人さんの許可が無いと入れませんよ」何て言い返してしまう事は、人命救助の観点で問題となりますし、死亡事故の発生は賃貸経営上の大きなリスクです。

自分の過去の経験から言うと安否確認依頼の9割くらいは「早とちり」です。

(安否確認依頼の理由)
・勤務先を無断欠勤している
・電話しても出てくれない
・意味深な言葉を残して連絡が取れなくなった
・ポストに郵便物が溜まっている
・異臭がする

さすがに異臭がしている状態であればかなりの状態であるとわかりますが、どれも「入居者本人と連絡が取れない状態」であるのが前提となるのです。

管理会社としてどのような動きをしているかについて簡単に自分が行っている事を説明します。

(安否確認依頼を受けてからの流れ)

1.入居者本人に電話。

この段階で、「会社を辞めようと思っている」、「親とケンカしている」、「交際を断りたくて無視していた」等の理由で依頼者からの電話に出ないだけの場合は解決です。

2.SMS送信

電話に出ない場合は、SMS(ショートメッセージ)「安否確認で入室しようと思っていますので大至急折り返し電話下さい」と入れます。
電話を無視する人でも、大抵は携帯を見ていますので「入室する」なんて書いてあると電話してくるものです。

管理会社からの電話にもメールにも反応しない場合は、本当に倒れている可能性が高くなってきます。

3.警察へ立ち会いの依頼

上記で反応が無い場合は、交番のお巡りさんに立会をお願いして、依頼連絡してきた方にも立ち会ってもらうようにします。

この段階では対象の入居者さんの契約書や身分証明書、緊急連絡先のわかる書類のコピーを持って行くと事情聴取の手間や緊急連絡先への早期報告に役立ちます。

31843360110番通報するとパトカーがサイレン鳴らして来てしまうので、自分は交番に直接お願いしていますが、「これから死にます」なんて言ってる状態なら、110番の方が良いと思います。





4.鍵の開錠

警察官と一緒に入室したからと言って、住居侵入罪にならない等と言うことにはないのですが、「室内で倒れているかも知れない」状況であるのだから「緊急性があった」と判断して開錠します。

警察官同行のメリットは、室内で倒れている事を発見してからの救急要請や、事件性がある場合の現場保存、その他ご家族への連絡等、全てお任せできる事です。

これを警察官立会無しで行うと、「第一発見者」となり「生死の確認でご遺体に呼びかけする」とか「冷たくなっていないか触って確認する」なんて事をして、110番通報と119番通報をして警察官が到着した後は「重要参考人」として指紋取られたり事情聴取されることになるのです。(経験者です・・・)


と、そんな流れなのですが、本題の「合鍵保管」の話に戻します。


安否確認をして、「実際に室内で倒れていた」と言うことになれば、人命救助をして感謝されるかも知れないし、万が一の事があっても早期に対応をした事になるでしょう。

少なくとも「緊急性があった」と誰もが判断するので「勝手に中に入った」との苦情はありません。

ところが、鍵を開けて室内に誰もいなくて「早とちり」である事が確定した場合には「鍵を持っていないこと」が問題になるのです。

合鍵が無い場合は、鍵屋さんに開錠を依頼するか、窓ガラスを割って入るかの判断を行います。

今時の玄関キーはピッキングしにくいタイプが普及していてベテランの鍵屋さんでも解錠に時間が掛かります。

鍵屋さんの鍵開け技術料と、窓ガラスを割るのはどっちが安いか?

何て感じでお金の事を考え出して、安否確認を申し出してきた勤務先の方に「費用負担して頂けますか?」と確認すると「ちょっと上司に聞かないと・・・」とかの話になり、お巡りさんを待たせる訳にもいかないので、誰がお金出すのか曖昧なままで窓ガラスを割ったりする事になります。

結果として本当に倒れていた場合は、正しい行為となり窓ガラスの復旧費用等は小さな話となりますが、「外出してただけ」であった場合は窓ガラスの復旧と費用の支払いを誰かにしてもらわないといけなくなります。

なので、自分的には合鍵を保管しないと決めた場合は、賃貸借契約を締結する際に「安否確認でガラスを割っても費用は出せません」とか確認の一筆を取るくらいした方が良いと思います。

まぁ その点は面倒な話ではありますが人命に比べれば大きな問題ではありません。

一番問題なのは、合鍵が無いことで「部屋の中を確認する為に鍵の解錠費用が掛かります」と安否確認を希望してきた人に伝えた段階で、「じゃぁ しばらく様子みます」なんて言われてしまう事です。

安否確認の9割は何でも無い。
これは、統計が有る訳では無く長年の自分の経験からの感覚です。

逆を言うと1割くらいは本当に室内で倒れているのです。


特に病気の場合には「早期の発見」が大切なのでしょう。

発見が遅れたから亡くなってしまった・・・

遅れた理由は、解錠を躊躇していたから・・・

と、言うことになりたくないので、自分は安否確認時には絶対に合鍵がある方が良いと思っています。


何とも、最初に書いた「合鍵なんて保管しない方が正しい」との言葉と矛盾している感想なのですが、結論を言わせて頂きますと

「合鍵の保管はしない方が良いけど人命救助の為には合鍵があった方が良い」 

です。

「人命」>「合鍵保管の面倒さとリスク」

って事なので、うちの会社では現状維持で合鍵を保管する体制が続くと思います。

ちなみに、現在は入居者さんの加入している家財保険に「鍵を無くした時に解錠するサービス」が付いているので、合鍵を保管していても「夜中に鍵を貸し出すリスク」は無くなりました。(安否確認とは無関係ですが)

ただ、保管の手間とスペースの問題、犯罪リスクの点は、合鍵を保管する事をやめない限りついてまわる事でしょう。

恐らく、自分が管理会社を1から立ち上げたとしたら「合鍵は全部入居者さんに渡します」「緊急時は躊躇なく窓を割ります」なんて言ってるかも知れませんね。


何か、今回の記事長くなっちゃいましたが、「人命優先」の考えは合鍵を保管していてもいなくても同じって事が結論です。


ではまた明日



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