「4410分の539と4410分の1078を足し算しても1にならないんだから計算間違ってるでしょ?」
「いえ、違うんです登記簿の記載方法が持ち分の表示じゃ無くて分けた数字の記載なので合ってるんですよ」
「え〜 いまいちわからないですねぇ・・・」
「話すと長いので、書面にして計算した内容を送りますよ」
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実は先日行われた売買契約で、営業の新人君が行った重要事項説明書の標記がおかしいと、物言いが付きました。
重要事項説明書には「登記簿の記載事項を標記」する部分があるのですが、今回取引した物件ちょっと複雑で過去50年間相続登記をしてこなかった事で、去年まとめて5回分の相続登記をしたものでした。
こう言うの慣れている方には普通の話なのかと思いますが、相続登記が行われて複数の共有者に「持ち分」を分ける際、一番最初の相続の時には、登記簿に記載された持ち分を示す分数の合計が「1」=「100%」になるのですが、2回目以降は亡くなった方の持ち分を相続人に分けた「わけ分」を表示するルールなので、登記簿に記載された分数を全部足しても「1」=「100%」にならないのです。
(例)お父様が単独所有(100%)していた土地を子供6人で相続した場合の登記簿の記載
子供はA・B・C・D・E・Fの6人
登記簿の記載には、
「所有権移転 原因 相続 共有者A・B・C・D・E・F 持ち分6分の1と書かれる」
この段階で売買して所有権移転してしまえば何と言う事は無いのですが、次の相続が発生すると登記簿の記載に違和感が出てきます。
(例2) 上記で相続した中のBさんが亡くなってBさんの持ち分を残された兄弟で均等に分けた場合
亡くなったBさんの持ち分 1/6分←これを5人で分けるには
1/6分を5人で分ける為に5倍して5/30とする
そうすると、各共有者に1/30づつ分けられる。
他の共有者の元々の持ち分は 1/6=5/30
亡くなったBさんから分けてもらえる持ち分は 1/30
5/30+1/30=6/30約分すると1/5が持ち分となる
で、2回目の相続の時の登記簿の甲区に表示されるのは
持ち分である1/5ではなく わけた分の1/30となる。
よって、登記簿の記載には、
「所有権移転 原因 相続 共有者A(C・D・E・Fも) 持ち分30分の1と書かれる」
と、言うことで登記簿に記載されている共有登記の表記は「わけた分」が表示されると一言で言えば、納得して頂ける事でしょう。
ちなみに登記簿の「全部事項証明」ではなく「所有者事項証明」の方を取得すると所有者個別の持ち分が表示されています。
ですが、今回の相続に関しては更に複雑な事情があり、契約の場でご理解頂けなかったので、書面で計算方法の経緯を書かせて頂きました。
と、以下は珍しい事例で読み解くのにかなりの時間が掛かるので、時間が有る時にでも読んで頂ければと思います。
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今回の案件、お父様から相続する兄弟の中に、母親の違う兄弟(半血兄弟)が、いらっしゃいました。
概要を再度書かせて頂きます。
お父様 単独所有 昭和44年死亡
(初回の相続)
(2回目の相続)
B(子1)が亡くなり2回目の相続。
(考え方)
C(子2)が亡くなり3回目の相続
上記が登記簿に書かれる内容で、この段階での実際の持ち分は
D(子3)が亡くなり4回目の相続
ここでもう一捻り。
約分すると 56/210
約分すると77/210
E(子4)が亡くなり5回目の相続
(1+0.5)=1.5
693÷1.5=462が、Fに対する分け分なので
上記が登記簿に書かれる内容で、この段階での実際の持ち分は
(結論) 土地
Aさんの持ち分 38.89% Bさんの持ち分 61.11%
で、長くなって恐縮なのですが、実は今回建物についても売買をします。
建物は、雨漏りだらけで全く使えないのですが、現況買主への渡しをするので、Aさんの成年後見人さんに建物の持ち分をきちんと算出するように言われています。
これがまた更に複雑で、当初の所有者が「お父様」ではなく、Aさんから見ると半血兄弟のお2人です。
と、何とも泣けてくる感じの複雑さになっていますが、計算したので書かせて頂きます。
(概要) 建物分
昭和55年 新築時の保存登記 C(子2)持ち分2分の1 E(子4)持ち分2分の1
(登場人物)お父様 昭和44年死亡
A(父の前妻の子・他の兄弟とは半血兄弟)
B(子1)平成5年死亡
C(子2)平成9年死亡
D(子3)平成15年死亡
E(子4)平成28年死亡
F(子5)
(初回の相続)
Cが亡くなり初回の相続
Cが亡くなった際に既に亡くなっていたBを除き
A・D・E・Fの4人で相続
元々のCの持ち分 2分の1を 4人で分けるがAに対しては半血兄弟への相続となる。
Cから見てAは半血兄弟、D・E・Fは全血兄弟となり、半血兄弟は全血兄弟の2分の1が法定相続分。
(考え方)
Cの持ち分 1/2を「全血の3人は半血の1人の倍分ける」
=(3×2)+1=分母を7倍にする。
Cの持ち分1/2を7倍=7/14
Aには他の兄弟の半分を分けると(7÷3.5人=2が3人の分)
A(半血兄弟)1/14を分ける
D(Cから見て全血兄弟)2/14を分ける
E(Cから見て全血兄弟)2/14を分ける
F(Cから見て全血兄弟)2/14を分ける
所有権移転 原因 相続 共有者A 持ち分14分の1
所有権移転 原因 相続 共有者D・E・F 持ち分14分の2
と、書かれる。
一回目の相続の際には分数の足し算で100%になるのに、2回目以降は亡くなった方の持ち分を分けた割合の表示のため、足し算しても100%にならない。(わけ分が登記簿に書かれる)
上記が登記簿に書かれる内容で、この段階での実際の持ち分は
Aさんの元々の持ち分0 今回追加1/14
Dさんの元々の持ち分0 今回追加2/14
Eさんの元々の持ち分1/2 今回追加2/14
Eさんは7/14+2/14で合計持ち分 9/14
Fさんの元々の持ち分0 今回追加2/14
合計100%
(2回目の相続)
Dが亡くなり2回目の相続
今度も、兄弟と半血兄弟への相続となる。
Dから見てAは半血兄弟、E・Fは全血兄弟となり、半血兄弟は全血兄弟の2分の1が法定相続分。
(考え方)
Dの持ち分 2/14を「全血の2人は半血の1人の倍分ける」
=(2×2)+1=分母を5倍にする。
Dの持ち分2/14を5倍=10/70
Aには他の兄弟の半分を分けると(10÷2.5人=4が2人の分)
A(半血兄弟)2/70を分ける→約分 1/35
E(Dから見て全血兄弟)4/70を分ける→約分 2/35
F(Dから見て全血兄弟)4/70を分ける→約分 2/35
所有権移転 原因 相続 共有者A 持ち分35分の1
所有権移転 原因 相続 共有者E・F 持ち分35分の2
と、書かれる。
上記が登記簿に書かれる内容で、この段階での実際の持ち分は
Aさんの元々の持ち分1/14 今回追加1/35
1/14+1/35=5/70+2/70=7/70→1/10
Eさんの元々の持ち分9/14 今回追加2/35
9/14+2/35=45/70+4/70=49/70→7/10
Fさんの元々の持ち分2/14 今回追加2/35
2/14+2/35=10/70+4/70=14/70→2/10
合計100%
(3回目の相続)
Eが亡くなり3回目の相続
今度も、兄弟と半血兄弟への相続となる。
Eから見てAは半血兄弟、Fは全血兄弟となり、半血兄弟は全血兄弟の2分の1が法定相続分。
(考え方)
Eの持ち分 7/10を「全血の1人は半血の1人の倍分ける」
=(1+0.5)=1.5 1.5倍にする。
が、端数が出る為、1.5倍の2倍である3倍する。
Eの持ち分7/10を3倍=21/30
Aには他の兄弟の半分を分けると(21÷1.5人=14がFの分)
A(半血兄弟)7/30を分ける
F(Eから見て全血兄弟)14/30を分ける
所有権移転 原因 相続 共有者A 持ち分30分の7
所有権移転 原因 相続 共有者F 持ち分30分の14
と、書かれる。
上記が登記簿に書かれる内容で、この段階での実際の持ち分は
Aさんの元々の持ち分1/10 今回追加7/30
1/10+7/30=3/30+7/30=10/30→1/3
Fさんの元々の持ち分2/10 今回追加14/30
2/10+14/30=6/30+14/30=20/30→2/3
合計100%
となる。
(結論) 建物
Aさんの持ち分 33.33% Fさんの持ち分 66.67%
と、言うことで本ブログ始まって以来最大の文字数になってしまいまして恐縮です・・・
ではまた明日
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