少し前から事故物件の定義等を国土交通省の委員会で決める動きがあるとのニュースが流れています。

元の発表資料はこちらなのですが、「不動産取引における心理的瑕疵に関する検討会を開催し、心理的瑕疵に係る適切な告知、取扱いに係るガイドラインの策定に向けた検討を開始します」と書いてあるので、ガイドラインを作り出すと言う事なのでしょう。

(追記)
その後、令和3年に国土交通省より宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドラインが発表されておりますので、ご参照下さい。
概要版
フルバージョン




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ガイドラインと聞くと、賃貸管理業界の人は「原状回復ガイドライン」が頭に浮かぶと思います。

原状回復ガイドラインについては、一番最初の平成10年に発表された時に自分自身は、「入居者側に寄りすぎ」とか「大家さんがかわいそう」とか思ったものですが、その後改定や判例の追加が行われて、今となっては判断基準として定着していると思ってます。

もっとも原状回復ガイドラインが出来る以前は自然損耗とか経年劣化とかの概念が弱くて、「新品で貸したんだから新品で返せ」の理論をクロス張替の根拠にしている大家さんも多く、「何で俺が使った訳じゃ無いのにリフォーム代払うんだ!」と頑固な地主系大家さんを説得する為に「建設省が発表して時代が変わったんですよ」とガイドラインを持参して説明した記憶があります。

最近では民法改定に合わせて設備不具合時の賃料減額に関するガイドラインも発表されていますが、何事もそうでしょうけど一番最初に発表するってのは大変な事なのだと思います。

発表してしばらく運用して裁判事例何かを検討しながら改訂版を出しながら定着して行くのでしょうね。

で、今回の「心理的瑕疵」に関するガイドラインの検討に関しては多くの関係者が求めている事だと思いますし大変期待しています。

5b0c751e昨年11月の日管協フォーラムでも語らせて頂きましたが心理的瑕疵ガイドラインは難易度が高いと思います。
どのようなガイドラインになるのか発表されていないのに書くのも失礼ですが、原状回復のガイドラインも設備不具合のガイドラインも物理的な事に対する対応法なのですが、心理的瑕疵のガイドラインは「物理的問題」だけでなく「心理的」な問題イコール「気持ち」「価値観」等の「心の問題」に対する取決めだからです。





自殺や殺人は心理的瑕疵になると言う事は定着して裁判例でもハッキリしている訳ですが、告知する年数は永久にするべきなのか、一定年数で終わりにするのか、自殺や殺人でなく病死で何日経ったら告知しなければいけないのか等を決める事によって実際に損害を請求できるかの判断や賠償額の根拠が決めやすくなるのかと思います。

しかしながら、事故物件サイトが登場する前だったら「一定年数経ったら告知をしない」との選択ができたと思いますが、もう無理だと自分は思います。

2015年に事故物件サイト最大手の大島てる氏のセミナーに参加して質疑応答や懇親会で話を聞かせて頂いた事がありますが、「事故があった事を永久に残すなんて酷い」と言う物件オーナー側の考えと「事故があった事を年数が経過したから隠すなんて酷い」と言う借主(買主)側の考えの対立があるのです。

大島氏は間違い情報以外は消さないとの事でした。

自分、話を聞いた当時は「年数経過すれば告知しないで良い」との考えでしたが、続々と新情報がUPされる仕組みを見て来たことで止められない流れを感じてます。

テレビや新聞に載った最新情報だけでなく「数年前に孤独死があった」等の過去の情報に関してもサイト内の掲示板に書き込んで通報する仕組みになっていて地図情報に反映されるので「てるバレしてないから大丈夫」と言う考えも後ろめたい対応となる事でしょう。

デジタル情報の場合は、仮に事故物件サイトが禁止されても残り続けるデジタルタトゥーとして永久に消えないし、事故物件サイトが必要だと考える人は大家さんや管理会社の数より遥かに多い事でしょう。

長年この仕事に携わり、心理的瑕疵の対応を多く経験してきた自分自身の現段階の考えは

・孤独死の早期発見にはセンサーを活用する。
・自殺、殺人系は告知する。
・病死、孤独死は発見時に汚損が無ければ不告知 あれば告知する。
・告知する期間は5年経過以降にオーナーと再協議して告知しないリスクを考慮して取扱うか判断。
・自殺・殺人・遺体による汚損がある場合はフルリフォームを提案。
・フルリフォーム費用に備えて孤独死対応系の保険に加入を推奨。
・室内の大幅改善によるバリューアップにより賃料下落を少なくする。


です。

ちなみに孤独死の発見を早めるセンサーに関しては先日センサーを開発されている会社さんからサンプル品の提供を受けており対象者が現れたら設置できる段階になっていますので、近いうちにブログで報告します。

告知の判断や期間に関しては、読者の皆様もいろいろとご意見があると思いますので、ガイドラインが早く出来て欲しいところですが、自分の意見を一言で言えば「事故物件系の保険に加入して万が一の時はフルリフォームしましょう」です。

事故があったからと言って立地が変わる訳でも陽当たりが変わる訳でも無いのだから、大幅なリフォームによって過去の出来事を告知しても、「この内容の部屋なら借ります」と選ばれる物件にするしか無いと思います。

28980b81実際に直近の病死事例では発見までに数か月だったのできちんと告知して貸しに出しましたが、室内の見える部分を全て新品に変えるリフォームを実施した事で旧賃料よりも高く貸す事が出来ました

「これだけリフォームしたのだから本当はもっと早く決まって高く貸せたのに」と言う「もっと」の部分が大家さんの本当の損害金だったのかと思いますが、こう言った細かい部分の取決めもガイドラインで決まる事を期待します。


ホント、このブログには昔から何度も心理的瑕疵系の話が登場していますが、超強力なお祓いとか完全なものがあれば原状回復やリフォーム以外の気持ちの問題は解決できると思います。

もっとも「幽霊が怖い」とか「縁起が悪い」とか考える人はどんなに素晴らしいリフォームをしても絶対に借りないでしょうから、そう言う人以外に部屋の価値を認めて頂く物件価値の向上を目指すべきなのでしょうね。

なんか一気に書いちゃったので、この記事は書きたい事を思い出して追記したり訂正したりするかも知れません。


ではまた明日


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